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近くて遠い対岸の家

空気が澄んでいる日なんかは
もう目の前に手が届きそうなほど近くに
そのお家はあるように見える
小さな佇まいでまあるい窓がある
広くはない庭に柿の木が一本
時折その家が見える場所を訪れる機会はあるにはある
だが、その場所から家までの道を
僕は知らない
架かる橋も辿るべき辻も分からない
緩やかに流れる川は
まるで途切れぬ貨物列車のように
永遠の踏切を点滅させる
ガタンゴトン、ガタンゴトン

遠い昔にその家を訪問した夢をみた。
ドアをノックしても誰も出てはくれなかった
去り際に振り返ると、二階のまあるい窓から
少女が空を眺めているのが見えた
その視線の先には
どんよりとした灰色の空に
川を渡るがことく大きな虹がかかっていた。

僕は「ああ」と、ため息をもらしその場を後にした
帰り道は、もう覚えていない。


by uzumaki_style | 2017-09-14 10:38


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